2023年2月、市村清新技術財団は第110回新技術開発助成の助成先11件を決定し、アドバンスコンポジット株式会社が助成先に選ばれました。 市村清新技術財団の助成は「独創的な新技術の実用化」をねらいとしており、基本的技術の確認が終了し、実用化を目的にした開発試作を対象にしています。当社の「セラミックス粉末、グラファイト粉末とアルミニウムからなる複合体(MMC)」に関する研究開発活動及び実用化について助成金に採択頂きました。
https://www.sgkz.or.jp/project/newtech/110/
新技術開発助成の概要
市村清新技術財団は広く科学技術に関する独創的な研究や新技術を開発し、これを実用化することによって我が国の産業・科学技術の新分野等を醸成開拓し、国民生活の向上に寄与することを目的としています。応募要件を満足する助成候補テーマは当財団に設けた新技術開発助成調査選考委員会および審査委員会で慎重かつ厳正に選考・審査され、理事会で決定します。
https://www.sgkz.or.jp/project/newtech/
日頃から当社研究開発にご協力いただいている皆さまに改めて御礼申し上げます。
当社は2015年7月より「地球の未来を素材で支える」を企業理念に掲げ、溶湯鍛造法による金属基複合材料及び接合製品の開発、製造並びに販売を行っております。特に、新しい複合材料の開発により、単一素材では成しえなかった最適特性を素材に持たせ、 飛躍的な特性の向上を実現するために努力を重ねております。この度のご支援は大きな助けとなり、そして実用化に向けての大変な励みとなりました。当社の溶湯鍛造法で製造される様々なアルミニウム合金基の複合材料は、軽量、高強度、高放熱性、低膨張性、易加工性などの特性を有し、課題解決に合わせた材料特性の最適設計ができます。今後も当社の複合材料の技術をさらに進化させることで、新しい特性をもつ材料を設計、開発し、世界の産業の革新、サステナブルな社会づくりへの貢献を目指して、精進し続けて参ります。
市村清新技術財団について
昭和43年の当財団設立以来、市村清新技術財団は、科学技術の研究開発に対する助成、すぐれた科学技術の顕彰および国際交流の促進、科学技術に関する創造性の育成、植物の生育に関わる研究に対する助成などによって科学技術の振興をはかることにより、我が国の経済社会の発展と国民生活の向上に寄与するために活動しています。
「セラミックス粉末、グラファイト粉末とアルミニウムからなる複合体(MMC)」
技術:アドバンスコンポジット株式会社
開発者:CTO 林 睦夫
技術開発内容
金属基複合材料(MMC)は、単一金属素材の良いところを引き継ぎながら、近年に開発された高機能な単一素材(セラミックス、カーボンなど)との組み合わせにより金属単体及びセラミックス単体では得られない特性の向上を実現できる素材である。しかしながら、製造に用いられる鋳造法から生じる鋳造欠陥による歩留まりの低下や、高強度素材であるが故に難削材として加工コストが高くなるというデメリットを保有していることになる。
本技術は、母材(アルミニウム)と機能材(セラミックスやカーボンなど)の混合粉末からなる成形体(プリフォーム)を作成したのちに、溶融アルミニウムを高圧含浸する方法により、高強度でありながらも加工性に優れたMMCを製造するものである(図1)。プリフォームの粉末組成やプリフォーム形成時の空隙の調整により、最終形成物の組成比や母材と機能材の界面構造(図2)を制御することで、所望の物性を得ることを可能とする。特にプリフォームに母材のアルミニウム粉末を含ませることで、機能材と母材の組成比の制御レンジが広がることで所望特性に合わせた素材設計を可能とする。また、微細な界面構造の形成により、MMCのバルク強度を保つと共に機能材が微細な故に優れた加工性を確保することができる。本開発では、試験片(φ60mm ×15mm)で得られた素材品質(強度,熱特性,加工性)を、実用化可能なサイズ(一例:310mm ×210mm ×95mm)にて達成することを目指すものである。
本開発のMMCは、従来のMMCと比較して、特性の制御性と加工性に優れており大幅な製造コストの削減が見込めることから、本開発のターゲットである自動車部品や半導体用放熱部材をはじめとして、将来基礎素材として使用されていく可能性が高いものである。